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新しいフライパンを買った!

<エッセイ>

野いちごの場所で・19 <新しいフライパンを買った!>


 多くの人が悠々自適の生活を楽しむ歳ごろ、ぼくは家族の病気介護というよんどころない事情で、突然「主夫業」をやらざるを得ないことになり、あっと言う間にまる二年が経った。
 少々ポカはやらかすが、仕事は段取りがよくて早いのが取り柄で、まあ普通の人の十倍は鼻歌で働いてきたと思う。貧乏で、おふくろが二年ほど寝たきりになったこともあって、子どもの頃から炊事洗濯、家事体験は十分にしている。家庭を持ってからも、子守りはもとより、炊事、洗濯、掃除、皿洗い、家事は公平に分担してきた。だから、突然の主夫業にあわてることも、違和感も無い。
 置かれた境遇の中で小さな喜びを探し出す。そこにあるもので、万事なんとか間に合わせる。そういう融通無碍の生き方をしてきたので、炊事も主婦並みのことはできないが、なんとか生きていける程度のことはできる。
 料理のメニューは、できるだけ簡単で、そこそこ栄養のバランスが取れ、材料が安く自分に作れる物を基本にローテーションすることにしている。ローテの期間は、近頃のひ弱になったプロ野球のピッチャーと同じで、中六日とか、七日で同じものがめぐってくる。
 こんなものができる。
 未知さんが学生時代に使っていた料理本で、マーボー豆腐と豚肉の生姜焼きをマスターした。料理本を使って分ったことは、調味料の分量をはじめとして、完璧に書いてあるとおりにしなくても、かなりいい加減でよいということ。
 マーボー豆腐には、ニンニクや生姜、白ネギを大胆に多目に投入すると美味しい。生姜焼きでは、おろした生姜を絞るのがあまりに面倒くさいので、絞らずにそのまま入れることにしたが、何の問題も無い。
 塩胡椒のし方を未知さんに教えてもらった。これで、鶏肉や法蓮草のソテー、エリンギとベーコンを具にしたパスタができるようになった。この塩加減、胡椒の加減もいい加減だが、一度も失敗無し。
 スキヤキや肉ジャガは自己流で昔から作っていた。これはもう一段工夫して美味しくしたい。どなたか、コツを教えてください。
 食事全体としては、野菜をたくさん食べることを心掛けている。ほぼ、全ての野菜が、サラダ油で炒めれば美味しく食べることができる。よく洗って、ザクザク切って、醤油、一番安い鰹節のけずり粉、最後に香りづけにごま油を投入すればOK。
 毎日、自分と未知さんのと、二つのお弁当を作る。ぼくのおかずは二品、未知さんのおかずは三品に落ち着いた。お弁当にもできるだけ野菜をたくさん入れる。朝、短時間に作るために、前の晩に下ごしらえする。ほぼ、365日、シシトウやピーマンを醤油と例の鰹節で炒める。シシトウには時々猛烈に辛いのが混じっている。やったー、この時が幸せだねー。
 余談。ぼくの山畑で育つシシトウにも時々辛いのがある。シシトウに辛いのが混じるのは、カラシへの先祖返りか、近くで栽培している鷹の爪との交雑かと思っていた。ところが、最近聞いた専門家の話によると、栽培環境のストレスが原因だそう。辛いシシトウを作るには、ぼくのようなズボラな農夫がいいようだ。
 さて、ぼくの料理に、朝に晩に活躍する道具はお分りだろうか。そのとおり、朝に夕に野菜を炒めるフライパン。マーボー豆腐も生姜焼きもスキヤキもソテーもフライパン。
 昔の賢い主婦は、フライパンを上手に使いこんで、良いフライパンにしていたそうだ。最近は、奥様も忙しくなったし、賢い主婦、というような生き方もはやらなくなった。そこで焦げ付かないようにコーティングしたフライパンが登場した。これは、昔人間には少し寂しいことだろうけれど便利で快適ではある。
 我が家の台所の冷蔵庫の上に、古いフライパンがいくつも重ねて置いてある。敏さんが使っていたフライパン。コーティングしたフライパンの泣きどころは、コーティングがはげるので長く使えないこと。敏さんが積み重ねているフライパンはその残骸。
 我が文学と人生の師、松下竜一さんは「底抜け貧乏暮らし」という随筆を書いていた。作品のテーマも、文章も、構成も超一流の後世に残る大作家だけれど、警察にマークされるほどの過激な反体制派、市民運動の支援者だったから、仕事の注文は少なかった。松下さんは年収百二十万円程度と言っていた。この国の文化、民主主義とはその程度のもの。
 ぼくも、病人三人を抱えた年金生活で、我が師の後を追って、いよいよ底抜け貧乏暮らしに突入した。師の後を追えるというのは嬉しいことだが、主夫を始めてとりあえず困ったのが、フライパン。コーティングが完全にはげて、焦げ付くことはなはだしい。朝に晩に使うので、うらぶれた暮らしの悲哀が、いや増す。
 いいフライパンは高価だ。辛抱して古いのを使うしかない。そしてまる二年、先日、行きつけのスーパーが模様替えした。天井から商品の新しい案内板がぶらさがっている。ひょいと見上げると、フライパンと書いてある。自然に足が向いた。千円の買物にもかなりの勇気がいるぼくが、躊躇なく一つを手に取った。千八百円、メイド・イン・ベトナムの美しいフライパン。敏さんは外国製の台所用品を嫌ったが、今やそんなことを言える我が家の経済状態ではない。
 毎日朝晩、快適に野菜を炒めている。焦げ付かない。簡単に洗える。コーティングがいつまで持つか、大事に使って試してみよう。
 ベトナム製の美しいフライパン、いよいよ本格的な底抜け貧乏暮らしの主夫になったぼくの心強い相棒である。
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